ネイティブスピーカーとノンネイティブスピーカー

 ネイティブスピーカー(NS)とノンネイティブスピーカー(NNS)はどう違うか考えてみた。まず、NSとNNSとの境界はグラデーションである。例えば、マレーシアで生まれ、両親は福建語を話すが、本人は幼稚園から大学までずっと英語で教育を受け、本好きで図書館の蔵書を読み漁ったという人や、カザフスタンでそもそもカザフ語とロシア語のバイリンガルの環境に生まれ、その後ロシア語を媒介として大学まで教育を受け、文法的に完璧なロシア語を書く人はNSなのかNNSなのか?

 ソ連時代、原水爆の実験が繰り返されたカザフスタンセミパラチンスク市は広島市姉妹都市協定を結んでいた。協定に基づき、毎年、15歳の少女が一人、広島の女子高に留学した。留学先は全寮制で日本語total emersion環境が実現していた。その環境で1年過ごすと、「聞く」「話す」は発音も含めてネイティブ並みになる。少なくとも、「話し言葉」については臨界期仮説を上方修整した方がいいかもしれない。ただし、「書き言葉」についてはその限りではない。考えてみれば、複雑な体系を持つ日本語の「書き言葉」を1年で習得することは不可能である。「話し言葉」「書き言葉」間の能力に大きな差が見られるのは、このプログラムで日本に留学した学習者に共通している。「話し言葉」「書き言葉」間の能力に大きな差が見られるのは、このプログラムで日本に留学した学習者に共通している。

 以下私が考えたNS、NNS区別の目安を箇条書きにする。

1.NSは文法的直観を持つ。例えば、次の文が非文であることをNSはすぐ判断できる。

 「夏休み、みんなが国へ帰ったことを見て、君は帰ろうとは思わない?」

 ただNSの文法的直観は暗黙知潜在的知識と呼ばれるもので、なぜそうなるかは説明できない。日本語教師はそれを顕在的知識へ高めなければならない。

2.2つの例文のニュアンスの違いを直感できる。

3.内在する語彙の体系が閉じているか、開いているか。

あるNNS日本語教師が学習者から次のような質問を受けた。「この間、アニメを見ていたら『ぼくはカゾイです。』と言ってた。『カゾイ』って何ですか?」彼女は即答できなかった。

NS日本語教師なら、次のように答えられるだろう。

 「そんな言葉はありません。もしかしたら、『カゾイさん』って人がいるかもしれないが、アニメの主人公にそんな名前は絶対に付けない。あなたの聞き間違えです。」

 ただし、業界用語には、一般人が理解できないものがある。それらを集めてみた。

番重・風袋・建端(たっぱ)・台割・囲障・囲局・香盤・

戻入(れいにゅう)・整容・出来(しゅったい)

4.NSとして認められる発音をするか。

5.非漢字圏NNSの場合、漢字の知識量の差。

6.日本に関する知識量の圧倒的な差。