カザフスタンの忘れな草

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 この写真はカザフスタンの美しい街アルマティから4WDで1時間半ほど行ったところにある大アルマティ湖の湖畔で撮った。ここの標高は2500m程度で夏でも涼しい。

 黄色い花はキンバイだと思う。おのずと光を発しているような、輝く黄色の美しい花。青いのは忘れな草。ロシア語では、Niezabutka(発音のとおりに表記)で、同じ意味。一つ一つの花は直径5mm程度。可憐な花。

 「花摘む乙女たち」の後ろにある山はピク・ソビエトフ(4300m)。最初の写真では、ピク・ソビエトフは雲の中に隠れている。次の写真では、その雲がこっちにやってきて、私の立っているところは日が翳った。その代わりピク・ソビエトフは見えるようになった。

 撮影は8月である。ピク・ソビエトフの頂上は万年雪に覆われている。この山に登ろうとしたことがある。いつもの通り、山岳ガイドのセルゲイと一緒にアルマティを出発、3300mくらいのところにキャンプし、そこから翌朝登り始めた。山の裏側(南斜面)を3時間ほど登り、尾根筋に達したあたりで雷鳴が轟き始め、それからしばらくして私が杖代わりに持っていたスキーのストックがブーンと低くうなった。それを聞いたとたん、セルゲイが大慌てで、雷が迫っているからすぐに下へ降りなければならないと叫んだ。二人で転げ落ちるように涸れ谷を下り、20分ほどで谷底に着いた。谷底で心の余裕ができ、お互いに相手のあわてぶりを笑った。

 それからテントを撤収し、車が置いてある大アルマティ湖まで3時間ほど歩いた。雹に打たれ、雷に追い掛け回され、つらい、怖い3時間だった。